呼吸器Q&A

Q16 夜、呼吸、いびきが止まると言われました

呼吸とは?

 わたしたちは、肺を膨らまして、肺のなかに空気を取り込んでいます。肺の中で、取り込んだ空気から酸素を体内に取り込み、身体でつくられた二酸化炭素を肺内の空気に渡して、肺を縮ませて、体外に排出しています。この空気の出し入れを呼吸とよび、呼吸するための胸とお腹の動きを呼吸運動と呼んでいます。呼吸により、私たちは、身体の中の酸素・二酸化炭素の量を調整しています。

どうして寝ていると呼吸が止まるのでしょうか?

 それでは、どうして寝ているときに呼吸が止まる(無呼吸)のでしょうか?呼吸が止まる理由には、大きく2つの原因があります。ひとつは、空気を肺へ取り込む通路(気道)が閉鎖してしまうことで、呼吸がとまります。もうひとつは、呼吸を調節している脳の問題で呼吸がとまります。気道は、鼻・口から始まり、のど(咽頭・喉頭)・声門(声帯)・気管・気管支までです。寝ていると、のどを拡げている筋肉の活動が低下します。通常ですと、それでも呼吸には支障がないのですが、ときに、のどが完全に閉鎖してしまうことがあります。のどが閉鎖しているため、呼吸運動をしても、空気の出入りができません。それで呼吸が止まるのです。これを閉塞性無呼吸とよんでいます。肥満や加齢、ホルモンの異常などでみられてきます。また、日本人では、のどの骨格が狭いため、肥満でなくてもみられます。これに対し、脳の問題でおこる無呼吸を中枢性無呼吸とよんでいます。呼吸を調節している中心は脳にあり、身体の中の酸素・二酸化炭素の量を最適な値になるように、指令を出しています。中枢性無呼吸は、この指令がとまることでおきます。これは、心不全・脳疾患や薬剤でみられることがあります。

寝ていておこる無呼吸はなにが問題なの?

 呼吸がとまることで、身体のなかの酸素の濃度がさがり、二酸化炭素の濃度があがります。また、睡眠が障害され、心臓に負担がかかります。それらは、動脈硬化・心血管障害・脳血管障害を起こしやすくします。そして、難治性の高血圧などの生活習慣病や不整脈の原因となります。代表的な症状として、日中の眠気がありますが、かならずしも全例にみられません。ほかに、睡眠中の呼吸困難、夜間尿、起床時頭痛、熟睡感不良、倦怠感など様々な症状を呈します。睡眠中の無呼吸が原因で種々の症状をしめすのを、睡眠時無呼吸症候群と呼んでいます。

無呼吸を指摘されたらどうすればよいの?

 睡眠中の呼吸・睡眠の状態を調べる検査をうけることをおすすめします。症状がはっきりしないこともありますので、呼吸器科や耳鼻科で相談してください。検査により、無呼吸の種類・程度、またその背景にある疾患が明らかになる場合があるからです。

いびきとは?

 いびきは、呼吸により出し入れされる空気が、鼻やのど(咽頭・喉頭)などを通過する際に、振動しておこるものです。通路が狭くなっていることを示しています。したがって、閉塞性無呼吸をおこしやすい状況といえます。いびきが止まるということは、呼吸が止まっていることを示しているかもしれません。

治療はあるの?

 治療はいくつかあります。検査により、治療方法がきめられます。
 閉塞性睡眠時無呼吸の治療は、肥満がある場合減量が第一ですが、減量は一朝一夕にできるものではなく、また減量のみで完治が困難なこともあります。ごく軽症な人では、身体を仰向けから側臥位(左右どちらかを下にする体位)にして寝ることで良くなることがあります。しかし、重症の方や高血圧・心血管障害・糖尿病など合併症のある中等症以上の場合は、寝る時にマスクを装着し、そこから送り込む空気の圧力で気道が閉塞しないようにする治療法(持続陽圧呼吸療法CPAP)が有効です。軽症な人やCPAP使用が困難な場合は、寝るときに下あごを通常より前方に出して固定する口腔内装置(マウスピース)があります。心不全などに関連する中枢性睡眠時無呼吸の治療法は確立されていませんが、陽圧換気療法や酸素吸入が有効であるとされています。