学会について

理事長就任挨拶

 2022年5月より一般社団法人 日本呼吸器学会の理事長に就任させていただきました。本学会は、1961年に「日本胸部疾患学会」として設立され、1997年に現在の「日本呼吸器学会」に名称変更し、2002年に一般社団法人化して現在に至っています。本会は、「呼吸器学に関する学理及びその応用についての研究発表、知識の交換、会員相互及び内外の関連学会との連帯協力を行うことにより、呼吸器学の進歩普及を図り、もってわが国の学術の発展に寄与すること」を目的としており、最近では、長谷川 好規理事長の時代に学会としてのMission、Visionとともに7つのゴールが整えられ、横山 彰仁理事長の時代に、より具体的な5年後の到達目標が提示されました。これは本会の役員の任期が2年ではありますが、短期的な計画だけでなく、長期的な視野にたって事業を展開していくことが示されたものであり、会員の皆様と共にこれら目標の実現とさらなる発展に貢献できればと考えています。
 呼吸器は、急性から慢性の多彩な疾患を含み、また複数の疾患や他臓器疾患が併存・合併する複雑かつ全身に影響を及ぼしうる病態を示す領域です。このため、診療には他科との連携や、病病・病診連携をはじめとした地域連携と共に、多職種で協力して診療していく必要があります。また、このような多様で複雑な疾患であるがために、未解決な問題も多く、課題解決を目指した研究においても、他科や異分野も含めたさまざまな英知を結集して取り組んでいくことが求められます。
 現在、わが国では2020年初頭から続く新型コロナウイルス感染症のパンデミックに見舞われ、日々の診療、研究、教育活動に多大なる影響をもたらし、今もまだ明確には出口が見えない状況が続いています。このことは、感染症対策や肺炎の診断・治療、呼吸管理、免疫系との関係など、体外環境と体内環境の両者の影響を常に受ける、他の臓器にはない呼吸器系の特徴を反映していると捉えることができ、呼吸器病学の重要性があらためてクローズアップされているとも考えられます。高齢化が進むわが国においては、肺の悪性疾患や慢性呼吸器疾患などに対する診療や研究の必要性が高く、同時にCOVID-19への対応も行っていくことが求められており、呼吸器科医に課せられた課題の多さとともに、社会からの期待がますます高まっているかと思います。
 一方で、他の内科系領域と比べて、呼吸器の専門医は圧倒的に少なく、社会の要請に追いつけていない状況があります。学会として新しい専門医制度にも対応しつつ、男女共同参画、若手医師へのキャリア支援など次世代を担う人材の育成も尽力していかなければなりません。
 このように取り組むべき課題の多い状況ではありますが、国内外の関連団体など社会との連携をより強く推進し、新しい考え方や技術、価値観を生み出すことで、むしろこの機会を本学会がさらに飛躍してMissionを果たしていく時期であると考えることもできるかと思います。
 日本呼吸器学会が社会からの要請に応え、責務を果たすことができるよう、全会員が一丸となり、呼吸器病学の発展に尽力して社会に向けて発信し、次世代につなげていくことができればと考えています。
 皆様のご指導、ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。

平井 豊博(京都大学大学院医学研究科)

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