呼吸器Q&A

Q10 坂道や階段を登る時、息が切れます

息切れとは

 息切れとは、呼吸をするのに努力を必要としたり、不快感を自覚することです。息切れには、息がつまる、胸が圧迫される、空気がほしい、呼吸が重い、努力しないと呼吸ができない、呼吸が浅い、十分に息を吐けない、呼吸が早いなど様々な表現があります。血液中の酸素量の低下、二酸化酸素量の増加、その他いろいろな原因がありますが、多くは体が必要とする酸素量を供給できなくなると息切れが出現します。詳細なメカニズムはわかっていませんが、呼吸をもっとした方が良いと感じるセンサーが肺、筋肉、腱、脳、動脈などにあります。これらからの情報が脳を経由して呼吸筋にもっと息をしなさいという命令を下し、それを察知することで、息切れを感じます。

坂道や階段を登る時の息切れ

 健常な人でも山登りや激しい運動をすれば息切れを感じます。坂道や階段を上るという動作は、運動している時と同様に、安静時より多くのエネルギーを必要とします。エネルギーが増加すると、酸素需要も増加し、もっと息をするようにと体に命令するので、息が切れます。呼吸をするための仕事量がふえている状態です。健康な人では坂道や階段を登っても息切れはほとんど感じません。この程度の運動で息切れを生じる場合には、酸素を体に取り込むのに支障があったり、酸素を体中に運ぶのが障害されている病気の存在が考えられます。表1は息切れの程度を分類する基準を示しています。グレード2以上では病的である可能性があります。

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坂道や階段を登る時の息切れの原因となる病気

 息切れを呈する病気には呼吸器疾患、心疾患、血液疾患、神経筋疾患、精神的疾患など多くの種類がありますが、坂道や階段を登る時の息切れで多いのは、呼吸器疾患、心疾患、血液疾患です。急におこった息切れと慢性の息切れでは、疑われる病気がかなり異なるので、ここでは慢性の息切れをきたす主な病気について述べます。呼吸器疾患の代表的な病気は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)と間質性肺炎です。COPDはタバコの煙を吸入することで肺の中の気管支に炎症がおきて、せきやたんが出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下します。また、気管支が枝分かれした奥にあるぶどうの房状の小さな袋である肺胞(はいほう)が破壊されて酸素の取り込みが低下します。間質性肺炎は、肺胞の壁の正常構造が壊れて線維化がおこり、酸素の取り込みが障害されます。心疾患では、心不全、血液疾患では貧血が主な息切れの原因となります。貧血があると取り込んだ酸素を体のすみずみまで運ぶことができません。心不全では、酸素の取り込みと酸素の運搬ともに障害されます。

"坂道や階段を登るときに息が切れる"という症状があったらどうしたらよいのでしょう

 坂道や階段を登る時の息切れをきたす病気はたくさんあるので、呼吸器内科のある病院を受診して下さい。症状、呼吸機能検査(肺活量など調べる検査)、胸部エックス線、胸部CT、心電図、血液検査、動脈血ガス分析(血液中の酸素、二酸化炭素濃度を調べる検査)、などを参考にして病気の診断をします。原因がわかればそれぞれに応じた治療が開始されます。坂道や階段を登る時の息切れをきたす主な呼吸器の病気はCOPDです。喫煙が主な原因なので、喫煙者はすぐに禁煙することが大切です。