災害時の対応について

3)呼吸器感染症に関するQ&A

Q1 呼吸器感染症の予防はどうしたらよいでしょうか。

A1.災害時には、避難所などで、多くの人が集団生活を行うことになりますので、かぜ、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症が流行しやすくなります。手洗いとマスク着用は、感染症の拡がりを防ぐ基本的かつ有効な手段です。水が使えない場合はウェットテイッシュやおしぼりが有効です。マスクはできるだけ使い捨てのものをご準備ください。食事の準備や病気の人のお世話、傷の処置をする前後、トイレの後、オムツ交換後、動物あるいはその排せつ物に触れた後、生ゴミを扱った後は、可能な限り、手洗いやアルコールによる手指消毒をしましょう。手に明らかに汚れがついている場合は、水道、石鹸を使用した手洗いをできるだけお願いします。水が乏しい時には、少しの水でも布等にしみこませできるだけ手指の汚れを取るようにしてみてください。また、多くの人が一緒にいる空間では、できるだけマスクを着用しましょう。可能な範囲で室内の空気を入れ換えることも大事なことですが、寒い時期であれば無理をしないでください。
かぜなどの予防には、うがいも有効といわれています。ヨード薬(イソジン)を用いなくても、水道水によるうがいで効果があります。

Q2 かぜをひいてしまいました。周りに拡げないためにはどうしたらよいでしょうか。

A2.かぜ、インフルエンザ、新型コロナウィルス感染症などは、ウイルスの含まれる咳やくしゃみのしぶきを吸い込こんだり、鼻水のついた手指に触れることによってうつります。かぜをひいて咳やくしゃみのある人は、咳エチケットを守りましょう。咳エチケットとは、咳やくしゃみをするときは、ティッシュでうけて、使用後のティッシュはゴミ箱に捨てること、ティッシュを持っていないときは手で口や鼻をおさえずに服の袖でおおうこと、鼻水や痰などが手についたときはすぐに手洗いをすること、咳をしているときはマスクをすること(必ず口と鼻の両方を覆い顔にフィットさせること)などです。
避難所では、周囲の人と距離を置くことは難しいかもしれませんが、ご自分が風邪をひかれた時には身体を休め、動きまわらず、また他の方との接触をできるだけお控えくださいますようお願いいたします。

Q3 かぜと、インフルエンザや新型コロナウィルス感染症の違いは何でしょうか。

A3.インフルエンザや新型コロナウィルス感染症は、普通のかぜと異なり、突然に38度以上の高熱や関節痛、筋肉痛、頭痛などの症状で発症します。その他、全身倦怠感や食欲不振などの全身症状が強く出るのが特徴です。インフルエンザや新型コロナウィルス感染症は、感染力が強く、周りの人へ感染を拡げる可能性があります。この様な症状がある場合には、速やかに巡回の医療スタッフに相談しましょう。

Q4 避難生活を送っていますが、2週間近く咳が続きます。どのような病気が考えられるでしょうか。

A4.十分な水分摂取ができない状況なので乾燥しているから咳が出るのか、と思わず、他の症状がないかをまず考えましょう。鼻水はないですか。のどは痛くないですか。おなかを下してはいないですか。筋肉や関節が痛くはありませんか。 集団生活の中で感染して咳が続く病気には、かぜだけではなく、新型コロナウィルス感染症、マイコプラズマ感染症や百日咳などが考えられます。他にもさまざまなウイルスによる感染症によって咳を起こします。慢性的に咳がある場合には、かぜやインフルエンザに限らず、肺結核や他の感染症、気管支喘息なども考えなければいけません。巡回している医療スタッフに相談しましょう。

Q5 かぜやインフルエンザの後の肺炎が心配です。どのような時に医療機関を受診すればよいでしょうか。

A5.通常、かぜによる症状は2,3日で改善しますが、それ以上咳が続く、高熱が続く、息苦しい、胸が痛い、動悸がする、身体が震えるなどの症状があれば、医療スタッフに相談しましょう。特にご高齢の方は、肺炎のこれらの典型的な症状がみられないことがしばしばありますので、「なんとなく元気がない」、「食欲が落ちてきた」、「ぼ-っとしている」、「活動性が落ちてきた」など普段の状態と異なる場合、肺炎になってしまった可能性もあるので、周囲の人は注意してあげてください。

Q6 避難所で、高齢の方の誤嚥性肺炎を防ぐにはどうしたらよいでしょうか。

A6.東日本大震災後、多くのご年齢の高い方が肺炎で亡くなられました。その多くは誤嚥性肺炎(食べものが誤って気管に入ることによって起こる肺炎)によるものでした。避難所では、食べられるものが限られてしまう状況と思いますが、できるだけ食べ物を小さく、飲み込みやすい大きさにしてから、食べるようにしましょう。ほおばるような食べ方はお勧めできません。水分を適切に摂っていただき、飲み込みやすくすることも、誤嚥性肺炎を防ぐポイントです。また、お口の中を清潔にしていただくために、歯磨き(オーラルケア)も重要です。避難所での暮らしの中で歯ブラシを使うことができない場合は、食後に水やお茶でうがいをしましょう。またハンカチなどを指に巻いて歯や舌を拭い、汚れをとるのも効果があります。液体歯磨きや歯磨きシートは、平時に準備しておいていただくと、避難所でのオーラルケアに有用です。

Q7 呼吸器感染症のワクチンは受けたほうがよいでしょうか。

A7.現在大変な思いをされている方々に、平時の備えについてお話しするのは申し訳ないことではありますが、もし、今後ワクチン接種の機会があれば利用していただきたいので、お読みください。
インフルエンザワクチン、新型コロナワクチンは、ウイルスに感染する確率や重症化を減らします。また、インフルエンザにかかると、その後に肺炎球菌などによる肺炎になることが多いです。肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による肺炎及び重症化を予防します。65歳以上の高齢者の方、65歳未満でも基礎疾患を持っている方は、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチン、そして新型コロナワクチンを接種することが強く奨められています。また、今後はRSウイルスによる感染症に対してワクチンを用いることが可能となります。様々なワクチン接種によってできるだけ感染症にかからないよう、平時からの対応が必要です。