Last Update:2020年11月27日

COVID-19 のいわゆる「後遺症」について


2020 年11 月5 日(第1 版)
一般社団法人 日本呼吸器学会


【はじめに】
 COVID-19 ではインフルエンザのような発熱、咳、痰などの感冒様症状以外にも嗅覚障
害、味覚障害、消化器症状(下痢、嘔吐)、耳鳴り、脱毛など多様な症状を訴える患者が
いることが分かってきた。当初、世界保健機構(WHO)は中国の報告から軽症なら約2
週間、重症であれば3-6 週間ほど回復に時間がかかると発表していた。しかし最近になっ
て本邦を含む世界各国からCOVID-19 罹患後に⻑期に症状が遷延するいわゆる「後遺症」
の報告が相次ぎ注目されている。


【どのような「後遺症」があるか】
 本邦の調査はまだ十分でない。イタリアからの報告(n=143)1)では、症状出現後約60 日
の段階で少なくとも1 つ以上の症状が残存している患者は87.4%にのぼり、症状としては
倦怠感が53.1%、呼吸困難感が43.4%、関節痛が27.3%、胸痛が21.7%に認められ、その
他、咳嗽、嗅覚脱失、目や口の乾燥、鼻炎、眼球充血、味覚障害、頭痛、喀痰、食思不
振、咽頭痛、めまい、筋肉痛、下痢など様々な症状が認められた(図1)。32.2%の患者で
1〜2 つの症状があり、55.2%の患者で3 つ以上の症状を認めた。また44.1%の患者では
COVID-19 罹患後60 日の時点でも生活の質の悪化が見られていたという。


 フランス2)では入院後約110 日以上経過した時点で、55%で倦怠感、41.7%で呼吸困難
感を認めたのは前述の報告と同様に高頻度であったが、34.2%で記憶障害、30.8%で睡眠
障害、26.7%で集中力の低下、20%で脱毛を認めた。
 ドイツからの報告3)では診断後約70 日の時点で(n=100)血液検査や心臓MRI 検査を
施行したところ、71%で高感度トロポニンT が検出され、また、きわめて高率(78%)に
心臓MRI に異常を認めたという。検査を行うと、心血管系の障害は頻度が高いものと考
えられる。
 また、COVID-19 に特徴的な症状として嗅覚・味覚障害があげられるが、イタリアから
の報告4)では診断時に味覚障害、嗅覚障害を認めた軽症患者では、発症から4 週間の時点
で48.7%(55 人)は完全に改善し、40.7%(46 人)で状態が改善したものの、10.6%(12
人)で症状の残存もしくは悪化を認めたという。前述の入院後約110 日目の調査において
も嗅覚障害が13.3%、味覚障害が10.8%認めていたという。


【病態】
 これらの「後遺症」は、COVID-19 によるものかどうかは不明のものを含むが、以下のよ
うな原因が絡み合った複合的な病態であると考えられる。

  1. 肺、血管、心臓などへの恒久的障害
  2. 個室やICU での隔離による不安やストレスなど拘禁反応的なもの
  3. 挿管人工呼吸管理等による筋力低下
    そのほか症例によっては薬剤の副作用なども関与する可能性がある。

【対応策】
 現在、「後遺症」に対する対策や治療についてエビデンスのある確立した対策や治療法は
なく、対症療法が中心となる。

  1. 前述のようにCOVID-19 は様々な症状が遷延するため、退院時点でも症状が残存するようであれば、定期フォローすることが望ましい。また症状は多岐にわたるため、他科との連携を取りながら、診療科横断的に身体的・精神的なフォローが必要である。
  2. これらの症状はCOVID-19 以外の原因でも生じうる点に注意が必要である。例え ば味覚障害では、口腔内の感染(カンジダや⻭周炎)、亜鉛不足、口腔内乾燥(薬剤 性、加齢など)、消化器疾患や糖尿病などが原因で生じうる。
  3. 呼吸困難に対して、肺拡散能は早期の呼吸器リハビリテーションで改善するという 報告5)も出ており、筋力低下以外にもリハビリテーションが有用である可能性があ る。
  4. 頻度の多い疲労感の原因は不明であり、治療法として確立したものはないが、休養
  5. 心療内科も含めた精神的なケアも必要である。


【おわりに】
 COVID-19 では症状の遷延、いわゆる後遺症がよく認められるのも特徴の一つのようで
ある。ただし、このような症状の
実態はよくわかっていない面が多い。このような点から、ウイルスが排除され感染症とし
て治癒したあとも、外来での経過観察が望ましい。
 2020 年8 月に厚生労働科学特別研究事業として、本学会のほか、コロナ制圧タスクフォ
ース、耳鼻科のグループの3 つの研究が本邦におけるCOVID-19「後遺症」の実態調査を
開始している。今年度中に解析結果が報告される見込みであり、本邦における「後遺症」
の実態について明らかにされるものと期待している。
 


参考文献


1)Carfi A, Bernabei R, Landi F: Persistent Symptoms in Patients After Acute COVID-19.
JAMA 2020;324:603-605
2)Garrigues E, Janvier P, Kherabi Y, et al: Post-discharge persistent symptoms and
health-related quality of life after hospitalization for COVID-19. J Infect 2020;S0163-
4453(20)30562-4
3)Puntmann VO, Carerj ML, Wieters I, et al: Outcomes of Cardiovascular Magnetic
Resonance Imaging in Patients Recently Recovered From Coronavirus Disease 2019
(COVID-19) JAMA cardiol July 27, 2020. doi:10.1001/jamacardio.2020.3557
4)Boscolo-Rizzo P, Borsetto D, Fabbris C, et al: Evolution of Altered Sense of Smell or
Taste in Patients With Mildly Symptomatic COVID-19. JAMA Otolaryngology Head &
Neck 2020;146:729-732
5)Liu K, Zhang W, Yang Y, et al: Respiratory rehabilitation in elderly patients with
COVID-19: A randomized controlled study. Complement Ther Clin Pract.2020;39:101166

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