ランゲルハンス細胞は組織球(結合組織や臓器などに存在するマクロファージ)の一種で、体に入ってきた異物を食べて、どんな異物かをリンパ球に伝える働きをします。このランゲルハンス細胞が肺や気管支壁で増殖し、組織の破壊や線維化、嚢胞形成を起こす病気が「肺ランゲルハンス細胞組織球症:肺LCH」です。
肺LCHは20~40歳を中心とした若年者にみられ、男性にやや多く、90%以上は喫煙者です。
ランゲルハンス細胞は気管支・細気管支などの表面(上皮)に存在し、主に外部から侵入してくる抗原(喫煙者の場合はタバコの煙)から体を守る役割を担っています。発症のメカニズムは未だに解明されていませんが、肺LCHは喫煙との関連が示唆されています。
咳、呼吸困難、気胸による胸痛などを認めますが、発熱、寝汗、体重減少、だるさ、食欲不振などの一般的な症状を自覚することもあります。また、無症状で健診などの胸部異常陰影として発見されることもあります。
気胸などの症状や、胸部CT検査で上肺野優位の嚢胞性・結節性陰影を認めた場合には、本疾患を疑います。ランゲルハンス組織球細胞の増殖を病理学的に証明するためには、生検(小さな組織の一部をとること)を行い、組織を採取する必要があります。気管支鏡や胸腔鏡での肺の生検を行い診断することが一般的です。
喫煙者の場合は禁煙が最も重要であり、受動喫煙も避けるべきです。禁煙により、多くの場合改善もしくは進行が抑えられますが、症状に合わせて副腎皮質ステロイドや免疫抑制薬を投与することもあります。さらに病気が進行した場合は肺移植も考慮されます。
タバコの煙を吸い込まないように気をつけましょう。症状がなくても1年に1.2回は定期検査を受けて下さい。せきや息切れなどを自覚された際はお早めに医療機関を受診してください。
一般的には肺LCHの予後は比較的良好といわれています。しかし自然に軽快することもあれば、進行性で呼吸不全によって死に至ってしまうこともあります。