日本呼吸器疾患患者団体連合会

第60回日本呼吸器学会学術講演会が開催~呼吸器疾患患者の災害対応が話題に

お知らせ

出典:NPO日本呼吸器障害者情報センター会報誌~第110号J-BREATH(よりよい呼吸のために)より抜粋

 第60回日本呼吸器学会学術講演会が2020/9/20(日曜日)~22(火曜日)に、初のWeb開催の形で開催されました。新型コロナウイルスに関する最新の研究動向をはじめとする数多くの発表があったなかで、私たちにとって特に印象深かったのは、患者団体と学会が国に対し長年訴えてきた呼吸器疾患患者の災害対策に関するセッションが開催されたことです。
演者のお一人である前・厚生労働省医政局の川畑測久氏とJ-BREATHは、呼吸器疾患患者の災害対応対策についてこれまで何度も意見交換を重ねてまいりましたが、今回のご発表の中では患者団体からの要望のスライドを提示して(表参照)その内容を読み上げたうえで、「他の疾患に比べて呼吸器疾患への災害対応が遅れている」「人工呼吸器へのバッテリー搭載が飛躍的に進んだ一方でHOTへの対応は未だ課題が多い」といった点を明確に示していただきました。
また茂木 孝先生(臨床呼吸器疾患研究所呼吸ケアクリニック東京)からも詳細なご発表があり、福祉避難所の開設が通常の避難所よりも開設までに時間を要すること、その対象を身体障碍者手帳2級以上に限定している自治体がありHOTを実施しているだけでは対象とならない場合がある、といった問題点を指摘されました。行政による制度の充実や事業者による製品開発については一層の尽力を期待するところです。また茂木先生は、「高齢者は防災への自助の意識は高いのに、実際には準備や避難の行動をとらない方が多い」という調査結果を示されていました。会員の皆様の中にも思い当たる方がいらっしゃるのではないでしょうか。日頃から災害時のアクションプランを立てて、実際に早めに行動に移すよう、私たち自身の心構えも大切です。
学会でこのような患者の災害対応がテーマに取り上げられたことについて、座長の蝶名林直彦先生(聖カタリナ病院)も、これまでにない画期的なことと評されていました。来年は令和4年度診療報酬改定に向けた陳情も控えており、引き続き訴え続けていきたいと思います。

表.令和元年度 慢性呼吸器疾患患者の療養環境整備に関する陳情書(日本呼吸器疾患患者団体連合会)抜粋

(2)-1
(医政局)
HOTおよびHMVを実施している慢性呼吸不全患者を、改正災害対策基本法の「避難行動要支援者」※1の対象に含め、市町村で掌握し「避難行動要支援者名簿」に記載して平時から災害時対応に備える。
※1:現状の一般的な基準である障害者等級1・2級、要介護3以上では大半が対象から漏れる。
(2)-2
(医政局)
自治体(市町村/都道府県)および医療機関、事業者の三者間で、同名簿をもとにHOTおよびHMV実施患者の情報を共有し、災害時対応※2の体制を整備強化する。
※2:安否確認/酸素ボンベ・バッテリー等 配送⇒福祉避難所・基幹病院(HOTセンター)への優先誘導など。
(2)-3
(医政局)
福祉避難所には、HOT患者(酸素ボンベ/酸素濃縮器使用が必要)に対し、他の避難者に気兼ねなく酸素ボンベを使用したり24時間電源を使用できる専用スペース等を設ける。