COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q73. 感染予防のための行動制限や隔離期間の緩和が世界的に勧められているが、今後さらに高い病原性の変異種が出現する可能性、そしてその場合の行動制限や隔離期間の対策について、どのような議論が行われているのでしょうか。

変異株

回答

今後出現しうる変異種については、正確な予測は困難とされています。ただし、現時点(2022年9月)ではオミクロン株の中での変異に留まっており、代表的なものはBA.2.75系統(ケンタウロス)、BA.4.6系統となっています。いずれもワクチン効果の回避が懸念されてはいるものの、実臨床における感染力や重症化の点で従来のオミクロン株との大きな違いは報告されていません。引き続き、異なる変異株どおし、または同じ変異株であっても異なる亜系統どおしの組み換えも生じる可能性はありますが、現時点で流行している株どおしの組み換え体が生じた場合の特徴については十分な予測が出来ません。
隔離期間については、国内外ともに短縮傾向になっていますが、ここで注意したいのは流行している株が変わり、感染性のウイルスの排出期間が短くなったわけではないことです。NEJMの報告(資料1*)ではPCRで陽性が確定した後、感染性のウイルスが検出されなくなるまでの期間は、デルタ株が平均4日、オミクロン株(BA.1)が平均5日でした。また発症者(入院を要しない軽症例)の隔離期間が本邦では2022年9月に10日間から7日間に短縮されましたが、この議論のもととなった本邦でのオミクロン株感染者におけるウイルス排出期間の調査結果(資料2*:BA.1が流行し始めていた2021年11月から22年1月にかけて、国立感染症研究所が行った調査)では、発症後7日以降(発症日を0日とカウント)は、感染性ウイルスが排出されていたとしても、その量は発症早期に比べて6分の1程度に減少していることが確認されたものの、発症8日目での感染性ウイルス排出患者の割合は16.0%でした。一方、発症11日目では3.6%でした。現在の主流であるBA.5のデータは未発表ですが、従来隔離期間とされていた発症8~10日目においては発症者からの感染リスクがあることに留意するべきです。隔離期間が短縮されても発症から10日間は感染リスクがあるので、公共の場でのマスク着用や手指衛生、咳エチケットなど基本的な感染対策を行うこと、重症化リスクの高い人との接触や混雑した場所を避けることは、日本の厚労省だけでなく、米国CDC、イギリス保健省(DHSC)なども注意喚起している国際的な共通事項となっています。今後新たな変異株が出現した際は、感染性ウイルスの排出期間に関するエビデンスを注視していく必要があります。

*資料1:https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2202092?query=featured_coronavirus
*資料2:令和4年9月7日新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード提出資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000987065.pdf

(回答日:2022/9/21)