COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q34. ファビピラビルのCOVID-19に対する治療効果に関して、新しいエビデンスがあれば紹介してください。

治療

回答

2021年6月15日時点では、ファビピラビルのCOVID-19に対する治療効果に関する報告では、藤田医科大学が中心となって無症状・軽症患者89 名に実施された多施設無作為化オープンラベル試験(早期治療群と遅延投与群を比較)(文献1)、ロシアで行われたランダム化比較試験(文献2)、中国から報告されたロピナビル/リトナビル治療群とファビピラビル治療群を比較する非ランダム化試験(文献3)が主なものであることは変わっていません。COVID-19の試験デザインは発展途上にあるために、試験結果に有意差があるかどうかで治療効果を結論づけることは困難であると考えますが、上記のいずれの試験でもファビピラビル投与によりウイルスの消失を早め、解熱などの症状改善が早まる傾向が示されています。藤田医科大学が中心となって実施したファビピラビル早期治療群と遅延投与群を比較する研究では、早期治療群のほうが早期のSARS-CoV-2 PCR陰性化、解熱傾向が得られる可能性が示されており、発症1週間以内にウイルス量が多いことが報告されていることを加味すると、ファビピラビルは発症早期により効果的であることが示唆されます。
 ファビピラビルの新しいエビデンスとしてはファビピラビル観察研究の中間報告第3報が2021年4月19日に公開されています(https://www.kansensho.or.jp/uploads/files/topics/2019ncov/covid19_favip_210419.pdf)。論文化されたエビデンスとしては公表されていないものがあります。その中でも本邦で実施された軽度呼吸不全COVID-19肺炎患者を対象としたファビピラビルとメチルプレドニゾロンの併用療法の効果と安全性を評価した臨床第2相試験(J-CRITICAL試験)の結果は近々論文に掲載される見込みです。さらに軽症患者を対象とした企業治験も実施中であり、結果の公表が待たれているところです。
 ファビピラビルも含めた抗ウイルス薬は発症早期の使用が効果的であるとの考え方は世界の主流になっており、抗ウイルス活性をもつ様々な物質、抗体医薬が開発中です。現在、自宅療養・宿泊施設滞在中に有効な治療介入ができないことが問題となっていますが、これらの軽症患者群にファビピラビルやその他の内服薬、吸入薬が治療オプションとして位置づけられる可能性があり、今後の臨床試験の結果に注目していく必要があります。

参考文献


1. Doi Y, Hibino M, Hase R, Yamamoto M, Kasamatsu Y, Hirose M, et al. A prospective, randomized, open-label trial of early versus late favipiravir in hospitalized patients with COVID-19. Antimicrob Agents Chemother. 2020; 64(12): e01897-20.

2. Ivashchenko AA, Dmitriev KA, Vostokova NV, Azarova VN, Blinow AA, Egorova AN, et al. AVIFAVIR for Treatment of Patients with Moderate COVID-19: Interim Results of a Phase II/III Multicenter Randomized Clinical Trial. Clin Infect Dis. 2020. doi:10.1093/cid/ciaa1176.

3. Cai Q, Yang M, Liu D, Chen J, Shu D, Xia J, et al. Experimental Treatment with Favipiravir for COVID-19: An Open-Label Control Study. Engineering. 2020; 6(10): 1192-8.

(回答日:2021/6/16)