COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q38. COVID-19スクリーニングに関する胸部CT検査の運用について、学会等の指針があればご教示ください。また、胸部画像で間質性肺炎などCOVID-19肺炎との区別が困難な疾患で入院した場合、どのような検査をもって陰性として隔離解除していいでしょうか。

検査

回答

医学放射線学会や放射線専門医・医会のCT検査の指針、北米放射線学会のCTに関する読影基準などが公開されている(公益社団法人日本医学放射線学会新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行期の放射線診療についての提言)放射線専門医・医会の指針(https://jcr.or.jp/covid19_2020/0423_ct_ver_1-0/)Fleishner Society、北米放射線学会などの共同の診療指針、画像診断基準Radiology 2020; 296:172-180 https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020201365),Radiology published on line (https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200152)などがあるが、対象者全例のCTによるスクリーニングは、原則推奨されておらず、地域の蔓延状況や患者接触歴などの感染リスク、スクリーニング対象者の感染リスクなどを考慮すべきである。日本外科学会の新型コロナウイルス陽性および疑い患者に対する外科手術に関する提言(https://jp.jssoc.or.jp/)の中では、緊急手術時に腹部CTの撮影が行われるなら、その時に胸部を追加するとなっており、すべての手術に術前胸部CTを推奨はしていない。理由を列挙する(1)PCR検査陽性例中、CTで胸部正常例が一定の割合で存在する。(Inui,S.et al.Radiology: Cardiothoracic Imaging 2020; 2(2):e200110 ( https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020200110),Erratum(https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/ryct.2020204002)(2)検査事前確率(ほぼ有病率に相当)が低いと、他疾患による偽陽性率が高く(1)を考えるとCT検査を行ってもcovidであるともないとも言えず、CTの意義が乏しいが、蔓延期や、濃厚接触者検診などように、検査事前確率がある程度以上高いと、検査事前確率次第で、CTスクリーニングの意味がありうる。(3)検査の対象が膨大になり、通常の検査を圧迫し、医療体制への負荷が大。(4)肺癌検診のように、メリットとデメリットを比較した費用対効果比の検討がなされていない。(5)被曝は少ないものではなく、検査のデメリットが、大きい。また最近では被曝を超えるメリットがあることを明記した検査同意書(依頼書)が必要だが、高齢者や基礎疾患のあるハイリスク者などを除いては、被験者自身にとってのメリットの少ないスクリーニング検査では、被曝のデメリットを明記した、検査同意(依頼書)が必要になる。

covid 19の典型画像は、感染に続発する自己免疫機序からの急性肺障害が、想定され、皮膚筋炎のような亜急性経過の膠原病や、薬剤性肺障害に類似し、画像所見のみでは、鑑別はできない。現状では、gold standardであるPCRや抗原検査を繰り返す以外ない。皮膚筋炎のような亜急性経過の間質性肺炎が鑑別になる場合では、MDA5などの筋炎関連抗体が有用であるが薬剤性肺障害では、もともと適当なバイオマーカ―がなく、臨床経過に頼る以外なく、呼吸器ウイルス肺炎やPCPのように急性経過のすりガラス陰影を示す感染症では、ウイルスの中和抗体やβD gulcanなどが有用であるものの各検査法の偽陰性、偽陽性もあり、単純ではない。また、PCR検査の回数については、厚生労働省のコロナ感染症診療の手引き第5版 p58解除・退院基準(https://www.mhlw.go.jp/content/000785119.pdf)では、有症状者で回復後24時間あけて2回の以上のPCR検査陰性、無症状者では、検査後一定の時点から24時間以上の間隔をあけて2回のPCR検査陰性が必要とされる。2回の咽頭PCR陰性でも下気道検体からのPCR陽性例の画像解析結果も公表され、果たして2回検査で十分なのかも疑問である点は日常の臨床感覚に一致する。Radiology 2021 298;E152-E155 https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2020203776)最も重要な点は、検査は臨床診断法の一つであって、これに過度に頼るのは危険がある点である。

(回答日:2021/6/22)