COVID-19 FAQ広場

FAQ広場は、新型コロナウイルス感染症に関する情報交換を目的としており、呼吸器学会員をはじめ医療従事者の方々に幅広くご利用いただきたいと思います。

Q60. SARS-CoV-2の流行時期に呼吸機能検査を施行するにあたって、検査前にPCRや抗原検査で陰性を確認することは必要でしょうか。また、COVID-19罹患後は何日以上経過すれば呼吸機能検査を行うことが可能でしょうか。

感染管理

回答

SARS-CoV-2流行時の肺機能検査では、検査そのものを必要最小限にとどめることが最も重要です。

やむを得ない場合の検査実施にあたり、現在様々な推奨が出されていますが、検査前のPCR・抗原検査は必須とされておりません1) 2)。しかし無症候性COVID-19患者の存在も考えますと、施設内の医療体制が許すのであれば検査前PCR・抗原検査の実施は有効な対策と考えます。
また、COVID-19罹患後の呼吸機能検査実施についてですが、こちらについての明確なエビデンスがないのが実状です。COVID-19の中・軽症者253名を対象にした研究では、ほとんどの症例で発症10日目以降にSARS-CoV2は検出されなかったとの報告もある一方で(ただし2例で検出あり)3)、血液悪性疾患のある重度免疫不全患者では20例中3例で、発症後20日以降もウイルスが培養されたと報告されています4)。患者の状況により様々であり明確な根拠に基づくものではありませんが、例えば既往症のない軽症回復例であれば発症後少なくとも4週間程度経過してからの実施が現実的な対応かもしれません。COVID-19罹患後の呼吸機能検査実施についてはより慎重であるべきと考えます。

SARS-CoV-2流行時の肺機能検査実施ではディスポーザルフィルターを用いることが推奨されていますが、ディスポーザルフィルターのウイルス除去能は実際のウイルスを用いて証明されたものではないこと1)、また呼気がうまくできず口の端から漏れ出る呼気による潜在的暴露リスクもあることから、PPEを含めた適切な感染予防対策も重要です。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会 
    新型コロナウイルス感染症流行期における呼吸機能検査の実施について
  2. American Lung Association
    Considerations for Conducting Spirometry During and After COVID19
    Considerations for Conducting Spirometry During and After COVID-19 (lung.org)
  3. Singanayagam A, et al. Duration of infectiousness and correlation with RT-PCR cycle threshold values in cases of COVID-19, England, January to May 2020. Euro Surveill. 2020 Aug;25(32):2001483.
  4. Aydillo T, et al. Shedding of Viable SARS-CoV-2 after Immunosuppressive Therapy for Cancer. N Engl J Med. 2020 Dec 24;383(26):2586-2588.

(回答日:2022/2/8)