呼吸器Q&A

Q8 急に胸が痛くなり続いています。 心臓や肺の病気でしょうか?

痛みの原因はなんですか

 胸部には、肺、胸膜、心臓、骨、神経、筋肉、一部の消化器臓器が存在し、様々な原因が考えらます。痛みの原因がなにかを推測するためには、(1)どのような痛みか(刺すような痛みか、鈍い痛みか、圧迫されるような痛みか、締め付けられるような痛みか)、(2)どこが痛いか(左胸部か、前胸部か、背部か、首や肩に放散するか、局所的か、いつも同じところか)、(3)どのくらい持続するか(瞬間的か、数分か、数時間からそれ以上か)、(4)どのような時に痛むか(動いた時か、安静時か、体位を変えた時か、呼吸との関連があるか、食事との関係があるか)、(5)ほかに症状があるか(呼吸困難、発熱、冷汗、吐き気、嘔吐など)を知る必要があります。これらの点が原因を推測するうえで重要なポイントになるので、説明できるようにしておくことが大事です。以下に、胸痛をきたす代表的な病気の痛みの特徴を説明します。

1.肺や胸膜の病気

 肺自体は痛みの神経がありません。痛みの神経は胸膜にあります。そのため、胸膜に関係する病気が痛みを感じます。

  • 胸膜炎・膿胸(膜に炎症が起こり、胸の中に膿がたまる病気)
    細菌などの感染症が原因で発症し、発熱や悪寒を伴います。痛みは鈍い痛みで、呼吸によって症状の変動があることが多いです。ただし、悪性疾患に伴う癌性胸膜炎の場合は発熱などを伴わないことが多いです。
  • 気胸(肺がパンクする病気)
    胸痛の原因として比較的頻度が高く、やせ型の若い男性によく認めます。また、肺気腫やブラ(気腫性のう胞)などの呼吸器の病気がある中高年にも認められます。一般的には、突然の胸痛と息苦しさを伴い、痛みは深呼吸で増強し、継続します。

2.心臓や血管の病気

 胸痛の中で、とくに生死にかかわるため緊急の対応が必要になることが多いです。

  • 狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患(心臓の血管が詰まる病気)
    狭心症は、労作時に胸部中央から左側にかけて締め付けられるような痛みや圧迫感があり、数分で消失します。時には首や肩などにも広がるような痛み(放散痛)や上腹部の痛みなどとして現れることもあります。安静時、夜間や明け方の寝ている時に起こるようなタイプもあります。これらの痛みがよりひどく、持続時間も長く、冷汗や呼吸困難などのその他の症状を認めた場合は心筋梗塞を疑います。
  • 大動脈解離(血管が裂ける病気)
    胸痛は突然起こり、引き裂かれるような激しい痛みで、時間とともに広がっていきます。症状は血流の流れが悪くなる部分に現れ、意識障害をはじめ失神、胸痛、腹痛など様々です。ほとんどは動脈硬化が原因です。

3.神経・筋肉・骨の病気

  • 肋骨骨折
    外傷や過度の運動、激しい咳などで肋骨が折れたり、ひびが入ったりすることがあります。安静時は鈍い痛みを認め、体位変換、深呼吸や咳、押した時に痛みが増強します。
  • 肋間神経痛・帯状疱疹
    肋骨に沿って走行する神経を肋間神経といいます。この神経が何らかの原因で障害されて生じる突発的な痛みを肋間神経痛と言います。痛みは片側性で強く、深呼吸や咳や体位の変化でも増強することがあります。原因の一つに、帯状疱疹があります。肋間にそって水ぼうそうのウイルスが潜んでいます。鋭く激しい痛みが局所的に現れ、水ぶくれのある発疹を伴います。その他、肋骨骨折や側弯症や脊椎の神経の圧迫によっておこることもあります。
  • 悪性腫瘍
    原発性(肺から発生するがん)または転移性(他の臓器から発生するがん)腫瘍が胸壁まで浸潤する(がんが広がる)と、持続性の強い痛みが生じます。

4.消化器の病気

  • 逆流性食道炎
    胸骨付近に生じる胸痛で、嚥下困難や胸やけなどの症状を伴います。
  • その他の病気
    急性膵炎や胆のう疾患などで、胸部に痛みが放散することがあります。食事に関係することが多いです。

5.心因性によるもの

  • 心臓神経症
    検査で何も異常を認めないにもかかわらず、精神的負荷がかかった時に胸痛、動悸、息切れなどを認めます。過換気症候群でも同様の症状がみられることがあります。

どの科にかかったらよいでしょうか

 心臓と肺の病気は胸痛を伴う頻度が高く、緊急性を有することが考えられます。症状が耐え難く、持続している場合は直ちに救急病院を受診するようにしてください。症状が比較的軽い場合は、内科、とくに呼吸器内科または循環器内科に受診することが望ましいでしょう。

どのような検査を行うのでしょうか。

 胸痛を有する病気は前述でお話ししたように様々あります。痛みの種類や部位などから病気を推測するために、詳しい問診を行い、身体診察を行います。まず、胸部レントゲン検査、心電図検査や血液検査を行います。これらの検査で診断がつかず、異常がなければ、胸腹部のCT検査、腹部エコー検査などの精密検査を行うこともあります。それぞれの診断のもとに治療を行いますが、胸痛の原因がはっきりしない場合は痛み止めや抗不安薬などを投与して慎重に様子を見ていくこともあります。