呼吸器Q&A

Q3 夜間や早朝にせきが出ます

はじめに

 咳を訴えて受診する方は多くいらっしゃいます。その際にどういった時間帯に咳が多いかが診断の有力な手掛かりとなり、夜間・早朝に多い時は以下のような病気が考えられます。

早朝に『ヒューヒュー』や『ゼーゼー』といった音を伴うような場合

 もっとも考えられる病気は気管支喘息(喘息)です。喘息はアレルギーによって気管支に炎症が続く病気です。気管支が色々な刺激(チリダニやハウスダスト、カビ、ペットのフケ、煙、冷たい空気など)に敏感になって、発作的に狭くなり、咳、痰、ゼーゼー・ヒューヒュー、息苦しさなどが出ますが、喘息の炎症は夜間や早朝に悪化しやすいのです、喘息は子供の病気と考えられがちですが、大人になってから、高齢になってからも発症する方も少なくありません。治療は吸入ステロイド薬が基本であり、アレルギーを抑える内服薬や気管支を広げる薬(気管支拡張薬)を併用することがあります。毎日の適切な治療を続けることで発作が無く、健康な人と同じような生活が送れるようになります。

音のない乾いた咳だけが続く場合

 喘息の1つの型である、咳喘息という病気が考えられます。この病気と喘息との違いは、咳喘息では「ゼーゼー・ヒューヒュー、息苦しさ」といった症状がなく、文字通り咳が唯一の症状です。治療には喘息と同じように吸入ステロイド薬が使われます。咳喘息の約30%が喘息に移行しますので、定期治療が必要です。

胸やけを伴う場合

 逆流性食道炎が考えられます。胃液が食道に逆流することが刺激になり咳を引き起こします。胃カメラで食道の観察を行ったり、治療薬である胃酸をおさえるお薬を服用していただいて症状が良くなるかどうかを確認することで診断されます。

仰向けに寝ると咳とたんが出る場合

 鼻や鼻のそばにある副鼻腔の慢性炎症による膿などがノドの奥に垂れ込むのを後鼻漏(こうびろう)といいます。仰向けに寝ると、垂れ込んだ後鼻漏が刺激となり咳や痰を引き起こします。アレルギーを抑えるお薬や、マクロライド系の細菌を退治するお薬、痰を出しやすくするお薬などが治療に使われます。鼻や副鼻腔の病気ですので、耳鼻咽喉科を受診することをお勧めします。

横になってしばらくたってから咳や息苦しさが出る場合

 色々な原因で心臓の働きが悪くなった状態である心不全が考えられます。横になると肺を通っている血管に血液が滞りそれが刺激となり咳を引き起こします。さらに息苦しさを伴うことがあります。上半身を起こすことで咳が軽くなったり息が楽になったりする場合はこういった状況を考える必要があります。また、心不全では足のむくみを伴ったり体重が増えたりすることが多いので、循環器内科を受診することをお勧めします。