呼吸器の病気

I.その他

リンパ脈管筋腫症

りんぱみゃくかんきんしゅしょう

概要

 リンパ脈管筋腫症(LAM)は妊娠可能な女性に発症することが多い病気で、異常な平滑筋様細胞(LAM細胞)が、肺・リンパ節・腎臓などで増殖するのが特徴です。気胸(肺が破れて空気が漏れる病気)を反復したり、進行すると呼吸不全になり酸素吸入が必要になる場合もあります。

疫学

 LAMは結節性硬化症という病気を合併する場合と、単独で発症する(孤発性)場合があります。稀な病気で日本人での有病率は100万人あたり約1.9~4.5人と推測されています。多くは妊娠可能な女性に発症しますが、閉経後に診断されることやごく稀に男性でも発症することがあります。

発病のメカニズム

 結節性硬化症に合併する場合にはTSC1、TSC2という遺伝子に異常が認められます。これらの細胞増殖を調節するタンパク質を作る遺伝子の異常が原因となって、過剰な増殖能をもつLAM細胞が出現すると考えられています。孤発性LAMでもLAM細胞にTSC2遺伝子の異常が検出されると報告され、原因の一つと考えられています。

症状

 せき、痰、血痰、喘息様の喘鳴などの症状で発症しますが、最近は無症状で発見される場合も少なくありません。気胸を合併したり、乳びと呼ばれるリンパ液が胸水や腹水となって貯留すると、それに伴って胸痛、息切れ、腹部の膨満をきたすことがあります。

診断

 妊娠可能な女性に、胸部CTで境界明瞭な嚢胞性病変が両肺に広範に認められ(図1)、肺などの病変から病理学的にLAM細胞が証明されれば、確定診断となります。

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治療

 気胸、胸水や腹水に対して対症療法を行います。呼吸不全になった場合には酸素吸入を行いますが、更に病状が進行すれば肺移植の対象になります。発病・進行には女性ホルモンが関わっていると考えられ、ホルモン療法も行われていますが、効果は定まっていません。呼吸機能が悪化してくる場合はmTOR阻害薬であるシロリムスを投与します。

生活上の注意

 妊娠、出産や経口避妊薬等の服用で症状が出現したり、病状が悪化したりすることがあります。妊娠出産は、母子の健康状態に大きく影響するので、医師と十分に相談し慎重に検討しなければなりません。

予後

 一般に病状はゆっくりと進行しますが、病状や進行のスピードは患者さんごとに異なり、長期間にわたって安定する方もおられます。最近の調査では、発病10年後に85%の患者さんが生存されていました。

参考文献

  1. 日本呼吸器学会編集.新呼吸器専門医テキスト.各論I. 気道・肺疾患.13. その他の肺疾患(比較的まれな疾患).B.リンパ脈管筋腫症.南江堂,480-481, 2015.
  2. 井上義一.呼吸器疾患最新の治療.VIII.間質性肺疾患.8.リンパ脈管筋腫症.南江堂,334-337, 2013.
  3. 難病情報センターホームページ.リンパ脈管筋腫症(LAM).https://www.nanbyou.or.jp/entry/173