呼吸器の病気

C. アレルギー性肺疾患

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症

あれるぎーせいきかんしはいあすぺるぎるすしょう/しんきんしょう

概要

 真菌(カビ)の胞子を吸い込むことでアレルギー反応が引き起こされ、喘息などを発症することがあります。アレルギー性気管支肺アスペルギルス症/真菌症はこのようなカビに対するアレルギー反応で起きる病気の一つです。

 原因となるカビはアスペルギルス、中でもアスペルギルス・フミガーツスという種類で起きることが多く、この場合アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)と診断されます。

 また、まれにアスペルギルス以外のカビや、キノコの仲間に含まれる真菌によっても同様の症状が起こり、アレルギー性気管支肺真菌症(ABPM)と呼ばれます。

疫学

 この病気は主に喘息を持っている患者さんに見られます。日本国内での正確な発症頻度は明らかではありませんが、血液検査によるアスペルギルスに対するアレルギーの頻度からは喘息患者の約2.1%程度と推測されています。

発病のメカニズム

 発病の仕組みは完全には解明されていませんが、吸い込んだカビ(特にアスペルギルス)が気管支に定着し、それに対するアレルギー反応が引き金となると考えられています。また、中枢の気管支に「粘液栓(ねんえきせん)」と呼ばれる痰の固まりができますが、これにはカビだけではなく、好酸球(白血球の一種)の関与も示唆されています。この粘液栓は気管支にダメージを与え、その結果「気管支拡張」と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。

症状

 症状は喘息と似ており、咳や痰が中心です。ときに茶褐色で円柱状の粘液栓が排出されることもあります。重症例では、発熱・食欲不振・血痰・喀血・息苦しさなどを伴うことがあります。

診断

 胸部エックス線では肺炎とよく似た影が映ることがあり、胸部CTでは気管支が粘液栓で詰まっている様子や、気管支の拡張がみられることがあります(図1)。また、血液検査でアスペルギルスに対するアレルギー反応の有無を調べ、喀痰検査などと組み合わせて診断を確定します。場合によっては気管支鏡検査を行い、詰まった痰を採取して詳しく調べることもあります。

治療

 通常の喘息治療に加えてステロイド薬の内服が必要です。ステロイド薬の内服は一定期間続ける必要がありますが、症状や画像上の改善が見られれば、徐々に減量していきます。ただし、副作用があるため、それに対する対策をとりながら治療を進めます。もしステロイドだけで十分な効果が得られない場合は、抗真菌薬(カビの増殖を抑える薬)を併用することもあります。

生活上の注意

 生活環境の工夫も重要と考えられています。十分な科学的根拠はまだ限られていますが、室内の換気や湿度の管理、エアコンなどの空調機器や室内の清掃によって、居住環境からカビを減らすことが推奨されています。

予後

 治療によって改善が見られても、約半数の患者さんで再発が報告されています。治療が遅れたり不十分だったりすると、肺が硬くなる線維化や気管支拡張が残り、元の状態に戻らないこともあります。結果として呼吸不全に至り、酸素療法が必要になる場合もあります。

(2025年9月)

図1

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