呼吸器の病気

A. 感染性呼吸器疾患

COVID-19(新型コロナウイルス)

しんがたころなういるす

概要

 2019年12月に中国の湖北省武漢市で発生した原因不明の肺炎は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が原因であることが判明しました。その後感染は急速に拡大し、2020年1月30日にWHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言しました。

疫学

 新型コロナウイルスは起源株に始まり、アルファ株、デルタ株へと変化を繰り返し、2025年8月時点でオミクロン株が流行しています。オミクロン株も免疫から逃れるため、マイナーチェンジを繰り返し、夏と冬に流行を引き起こしています。

発症のメカニズム

 人から人に感染し、感染した人がせきやくしゃみで空中に吐き出した分泌物に混じったウイルスが、他の人に接触して口や鼻から侵入することによって感染が成立します。

症状

 新型コロナウイルスに特徴的な症状は、味覚障害と嗅覚障害ですが、その頻度は低下しています。3大症状は熱、咳、喉の痛みですが、比較的症状が軽く、かぜ症候群と区別は困難です。

診断

 市販の新型コロナ迅速診断キットにより短時間で簡便に診断できます。インフルエンザとの同時検査法もあり、インフルエンザ流行期には有効です。

治療

①対症療法
基礎疾患のない若年者は軽症で経過することが多いため、解熱鎮痛薬で様子をみる事が出来ます。ただし、約10%に後遺症を併発し、治療法が確立されていません。

②重症度別治療方法
抗ウイルス薬を含む治療方法を図1に示しています。発症後早期に抗ウイルス薬を使用することが推奨されています。

生活上の注意

①一般的な予防方法
マスクの着用、ヒト-ヒト間距離の保持、手洗いの励行によりウイルスの体内への接触や侵入を減らすことが可能です。

②新型コロナウイルスワクチン
高齢者、基礎疾患を有する患者さんなどはワクチン接種をすることが推奨されています。

予後

わが国のCOVID-19による死亡数は2022年が47,638人とピークでしたが、2023年が38,086人(死因順位第8位)、2024年も35,865人(死因順位第8位)と大きな減少はみられておらず、両年ともにその約97%は65歳以上の高齢者です。インフルエンザによる死亡数は2023年が1,383人、2024年が2,855人であったのに対し、COVID-19による死亡数はそれを大きく上回っています。

出典

出典:
厚生労働省
令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況. 第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別
令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況. 第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別
令和4年(2022)人口動態統計月報年計(概数)の概況. 第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別

(2025年8月)

図1

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