呼吸器の病気

A. 感染性呼吸器疾患

肺真菌症

はいしんきんしょう

概要

 カビの仲間を総称して真菌と呼びます。肺真菌症は真菌を吸い込むことによって発病する感染症です。皮膚の水虫は白癬菌(はくせんきん)によって起こる「表在性真菌症」で、肺や脳などに起こる病気は「深在性真菌症」といいます。真菌の種類は様々で、カンジダやアスペルギルス、クリプトコッカス、ムコールなど、種類により病変が異なります。

疫学

 肺真菌症は増加しています。肺アスペルギルス症が最も多く、カンジダ症、ムコール症がそれに続いて多くなっています。

感染の経路と発病

 真菌は空気などの環境中に存在しています。環境から吸い込んで体内に入ったり、口の中や皮膚に付いたりしていますが、健康な人に深在性真菌症が起こることはまれです。ステロイド剤や免疫抑制剤を飲んでいたり、白血病や抗がん剤によって正常な白血球が減っていたりするなど、抵抗力が落ちている人で発症することがあります。クリプトコッカス菌は健康な人にも病気を引き起こすことがあります。

症状

 発熱やせき、たん、血痰、だるさ、呼吸困難などの症状が現れます。結核や肺炎などと似た症状のため真菌が原因と疑いにくい場合があります。急激に症状が進む場合と緩やかな場合があり、真菌の種類によっても様々です。

検査

 胸部エックス線検査、胸部CT検査で影があらわれますが、決め手となる特徴的な画像となることは多くありません。たんの検査や気管支鏡検査で病巣部の分泌物などを培養して真菌を証明します。血液検査も診断の助けとなります。診断が難しく、手術が必要な場合もあります。

治療

 治療は、真菌の種類によって異なりますが、抗真菌薬による治療が主です。病変が1カ所に限定している場合には手術で切除する場合もあります。

生活上の注意

 真菌は環境中の至る所に生息しているので、すべてを取り除くことは不可能です。しかしながら、吸い込む機会や量を減らすことは重要ですので、特に免疫力の低下している人は廃屋、屋根裏、地下室、工事現場などホコリやカビの多い場所は出来るだけ避けましょう。   詳しい情報は千葉大学真菌医学研究センターホームページを参照してください:http://www.pf.chiba-u.ac.jp/medemiru/me11.html