呼吸器の病気

A. 感染性呼吸器疾患

インフルエンザ

いんふるえんざ

概念

 インフルエンザウイルスによる急性熱性感染症で、本ウイルスにはA、B、Cの3型があります。通常、寒い季節に流行するとされています。しかし最近では、一年を通して散発的にみられるようになり、注意が必要です。また、従来のインフルエンザウイルスが大きく変化して大流行する新しいインフルエンザ、いわゆる新型インフルエンザも重要です。

疫学

 年によって流行する型が異なります。2015/2016年におけるインフルエンザの流行状況は、例年より流行のピークがやや遅くA型(H1)pdm09が流行し、後にB型にシフトしていきました。潜伏期間は通常1~3日といわれています。

発症のメカニズム

 人から人に感染し、感染した人がせきやくしゃみで空中に吐き出した分泌物に混じったウイルスが、他の人に接触して口や鼻から侵入することによって感染が成立します。これを飛沫感染と呼びます。

症状

 突然の発熱(通常38℃以上の高熱)、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛などが現れ、せき、鼻汁、咽頭痛などの上気道症状がこれに続き、約1週間で軽快します。主な合併症として肺炎と脳症があげられます。通常のかぜ症候群とは異なることが重要です。

診断

 流行状況、患者との接触歴の確認、典型的な臨床症状が診断の第一歩となります。インフルエンザ迅速診断キットにより短時間で簡便に診断でき、A型とB型の鑑別も可能です。

治療

①対症療法
 自宅での安静加療を原則とします。水分補給や食事摂取ができない時などは、点滴による補液が必要となります。

②抗インフルエンザ薬
 現在、市販されている代表的な抗ウイルス薬を表1に示しています。発症後48時間以内に使用しなければ、効果はないといわれており早めの受診が勧められます。市販はされていませんが、新たな作用機序の薬も開発されています。

表1 国内で使用可能な抗インフルエンザウイルス薬

商品名 作用機序 有効な型 投与経路
シンメトレル®
(アマンタジン)
M2蛋白阻害 A型 経口(1回100mg、1日1回、5日間)
リレンザ®
(ザナミビル)
ノイラミニダーゼ阻害 A型とB型 吸入(1回10mg、1日2回、5日間)
タミフル®
(オセルタミビル)
経口(1日1カプセル、2回、5日間)
ラピアクタ®
(ぺラミビル)
点滴静注(1回300mg、単回)
イナビル®
(ラニナミビル)
吸入(1回40mg(10歳以上)、1回20mg(10歳未満)、単回)

生活上の注意

①一般的な予防方法
 マスクの着用、手洗いの励行によりウイルスの体内への接触や侵入を減らすことが重要です。他の人に感染を拡大させないために、感染者は発症してから5日間、解熱が得られてから2日間は自宅で安静加療することが望ましいです。

②インフルエンザワクチン
 インフルエンザワクチンは不活化ワクチンのため、免疫のない患者に接種しても感染を起こす心配はありません。高齢者、基礎疾患を有する患者、医療従事者などはワクチン接種をすることが推奨されています。

予後

 発症早期に抗インフルエンザ薬を投与すれば、予後は比較的良好です。