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市民のための医療コラム

季節性インフルエンザと新型インフルエンザ

季節性インフルエンザと新型インフルエンザ

概念

インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる感染症です。インフルエンザウイルスは、ウイルス粒子の内部にある核タンパク質(NP)やマトリックスタンパク質(M1)の抗原性の違いによって、大きく、A型、B型、C型、D型の4つの型に分けられます。このうち、ヒトに季節性の大きな流行をひき起こすのは、おもにA型とB型で、日本では、例年12月~3月が流行シーズンです。インフルエンザの流行状況は、厚生労働省や各自治体から常に公表されています。

季節性インフルエンザと新型インフルエンザ

A型やB型のインフルエンザは、インフルエンザウイルスの抗原性が小さく変化しながら、毎年世界中で流行しています。これが季節性インフルエンザです。いっぽうで、A型のインフルエンザウイルスでは、時にこの抗原性が大きく変化したウイルスが現れ、多くの人々が免疫を獲得していないことから、世界中に急速にまん延する(パンデミック)可能性があります。これが新型インフルエンザです。新型インフルエンザの流行は、ひとたび発生すれば、人々の生命や生活、医療体制や社会経済など、世の中に大きな影響を及ぼすことが考えられますが、いつどこで発生するのかを予測することは困難です。新型インフルエンザは、パンデミックなどにより多くの人々が免疫を獲得すると、やがて、季節性インフルエンザへと落ち着いていきます。

過去の"新型"インフルエンザ
流行時期 名称
1918~1919年 スペインインフルエンザ
1957~1958年 アジアインフルエンザ
1968~1969年 香港インフルエンザ
2009~2010年 新型インフルエンザA(H1N1)pdm2009

感染経路

インフルエンザウイルスに感染した人が咳やくしゃみをすると、ウイルスを含む微細な唾液・粘液の粒子(飛沫、感染性飛沫)が空気中に拡散し、周囲の人がそれを吸い込むことで感染します(飛沫感染)。また、インフルエンザウイルスが付着した手指で顔(口や鼻)を触れることで、感染する可能性もあります(接触感染)。なお、より小さな粒子(エアロゾル)による感染(エアロゾル感染)の可能性も指摘されています。

症状

インフルエンザウイルスに感染してから症状が出現するまでの期間(潜伏期間)は、およそ2日(1~4日)であり、その後、突然の発熱、せき(通常は乾いたせき)、頭痛、筋肉痛、関節痛、強い倦怠感、のどの痛み、鼻水、嘔吐(おうと)などが現れます。高齢者や乳幼児では発熱を伴わないこともあります。また、小児では成人よりも吐き気、嘔吐(おうと)、下痢といった消化器症状を伴いやすい特徴があります。症状出現の前日から発症後約5~7日までは、他の人にうつす可能性(感染力)があります。症状は、多くの場合、1週間程度で回復しますが、せきや倦怠感などが2週間以上長引くこともあります。
合併症として、小児ではまれに脳症を、高齢者や慢性疾患がある人では細菌性肺炎の合併や、併存する慢性疾患の悪化をきたし、重症化する場合があるため注意を要します。

診断

鼻やのどの奥をぬぐって、インフルエンザウイルスの抗原や遺伝子を検出する診断キットを用いることで迅速に検査結果が判明し、A型とB型の判別も可能です。流行状況やインフルエンザ患者との接触歴、典型的な臨床症状の有無なども診断の重要な判断材料になります。

治療・予後

抗インフルエンザ薬*による治療によって、症状緩和や発熱などの罹病期間の短縮、重症化の抑制などが期待されます。発症から48時間を過ぎると治療効果が低下するため、早めの治療開始が勧められています。また、インフルエンザは、多くの健常者の場合は自然に治る病気です。抗インフルエンザ薬による治療は、発症後の時間や病状、重症化リスクなどによって異なるため、医師の判断に基づいてなされますが、発症からの時間経過や症状の経過などによっては対症療法が行われることもあります。

*国内で使用が可能な抗インフルエンザ薬には、ノイラミニダーゼ阻害薬(商品名:リレンザ®、タミフル®、ラピアクタ®、イナビル®)やキャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬(商品名:ゾフルーザ®)があります(2026年2月現在)。

予防

一般的な予防策

手洗いやマスクの着用による接触感染対策、飛沫感染対策が有効です。また、室内における適度な湿度(50~60%)の保持やこまめな換気も効果的です。
乳幼児(特に2歳未満)では、息苦しさや体調不良を訴えたり、自分でマスクを外したりすることが困難であるため、窒息や熱中症のリスクが高まり、マスクの着用は奨められていません。

ワクチン

インフルエンザワクチンは、インフルエンザの発症や重症化の予防に一定の効果を有しています。高齢者や小児、施設入所者、介護者、医療従事者、慢性疾患を有する人などはインフルエンザワクチンの接種が推奨されています。インフルエンザは、日本では、例年1月末~3月上旬に流行のピークを迎えます。ワクチン接種後に免疫が形成されるまでおよそ2週間かかるため、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられています。

抗インフルエンザ薬の予防投与

インフルエンザの重症化のリスクがある人**がインフルエンザウイルスにばく露された場合や、病院・高齢者施設などでインフルエンザが集団発生した場合には、インフルエンザの発症予防を目的として、抗インフルエンザ薬の予防投与が考慮されます。

**インフルエンザを発症している患者と同居しているご家族あるいは共同で生活している人で、高齢者(65歳以上)、慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、代謝性疾患(糖尿病など)、腎機能障害などの基礎疾患がある人

2026年03月12日

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