市民のみなさまへ
市民のための医療コラム
子供さんや若い成人に多い肺炎、マイコプラズマ肺炎
はじめに
肺炎は、「老人の友」と呼ばれるように、一般的には高齢者に多く見られる病気です。しかし、子供さんや、若い成人に多くみられる肺炎があります。それがマイコプラズマ肺炎です。高齢者の肺炎と異なり、亡くなったりすることはほとんどない病気ですが、しつこい咳が長く続いたり、ヒトからヒトに感染するので注意が必要です。
このコラムでは、マイコプラズマ肺炎の特徴、他の感染症との違い、受診や治療のポイントについて、分かりやすく紹介します。
マイコプラズマ肺炎とは?
マイコプラズマ肺炎は、Mycoplasma pneumoniae(肺炎マイコプラズマ)という細菌の感染によって起こる呼吸器感染症(肺炎)をいいます。ほとんどが軽症で、自然に治ることもありますが、非常に稀に重症化することがあります。従来、4年に一度のオリンピック開催年に定期的に流行していたため「オリンピック肺炎」と呼ばれていましたが、最近はその傾向はなくなりました。新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まってから2023年まで大きな流行は確認されていなかったのですが、2024年には過去に例がないほどの大流行が起こりました。
マイコプラズマ肺炎は、発熱、倦怠感、頭痛、咽頭痛などの風邪のような症状がではじめて、数日後に、咳が出てきます。咳は、痰を伴うことが少ない乾いた咳が特徴で、「長引く頑固な咳」と表現され、マイコプラズマ肺炎の特徴の一つといえます。本感染症は、咳やくしゃみの飛散から感染が拡がる、いわゆる飛沫感染が主体で、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症と同じ感染様式です。潜伏期は2~3週間、感染症と濃厚に接する家族内、もしくは、職場内、学校などの小集団でしばしば拡がります。新型コロナウイルス感染症への飛沫感染対策が、厳重に行われていた2020年から2023年頃まで流行がなかったのは、マスク着用や、手指衛生がしっかり行われていたため、マイコプラズマ肺炎も増えませんでした。言い換えると、予防がしっかりできれば流行は防ぐことができます。
風邪・インフルエンザとの違い
症状だけでは見分けがつきにくいこともありますが、以下の点が判断の参考になります。風邪(感冒)は、鼻、のど、咳の3症状が、同時期に、同程度、出現するのが特徴で、数日で治っていくことが多い感染症です。一方で、インフルエンザは、突然の高熱で発症し、全身症状(筋肉痛・倦怠感)が強く、一度でも罹患した方は、普通の風邪との違いはよく分かるかと思います。マイコプラズマ肺炎は、初期こそ、普通の風邪と見分けが付きませんが、咳が長引いて、中には、眠れないこともあります。
診断と治療
病院では、お子さん、若い成人の方が、発熱、長引く咳があると本感染症を疑います。感染症の診断は病気を起こす微生物を証明することです。患者さんの身体から、Mycoplasma pneumoniaeを検出できれば診断がつきますが、本菌は、培養をするのに長時間が必要になります。早く診断できるように、マイコプラズマだけがもつタンパク(抗原といいます)をみたり、マイコプラズマの遺伝子を検出する方法で診断したりします。これらの検査により、数時間で診断をつけることができます。ひとたび診断がつけば、マイコプラズマに有効なマクロライド系、テトラサイクリン系といった抗菌薬を使用します。
感染を防ぐためにできること
マイコプラズマは、新型コロナウイルス感染症と同様に、飛沫感染しますので、マスク着用、換気などの感染予防対策を行うことが必要です。併せて、石けんによる手洗いやアルコールによる手指衛生も併せて行いましょう。マイコプラズマに限らず、発熱や咳がある場合には、咳エチケット(マスクの着用など飛沫が飛ばない対策)を行いつつ、登校や出勤を控えることも検討してください。お子さんが罹患した場合について、マイコプラズマ肺炎は、学校保健安全法で「第三種学校伝染病」に指定されているため、急性期は出席停止となります。一方で、明確な出席停止期間は定められていません。症状が軽快したら登校可能となります。
おわりに
マイコプラズマ、聞き慣れない微生物ですが、お子さんや若い成人の方に肺炎をおこす少しかわった感染症です。死に至らしめるような恐い病気ではないですが、ヒトからヒトに感染が拡がりますし、何より長引く咳は、苦しく、日常生活に影響もでます。「風邪がこじれた、咳が止まらない、苦しい」という場合は、医療機関を受診して正しく治療をしましょう。
2025年11月20日



