市民のみなさまへ
市民のための医療コラム
風邪?インフルエンザ?──RSウイルスの見分け方と今年の流行
はじめに
「熱が出て咳をしているけれど、風邪かな?インフルエンザかな?」と悩むことはありませんか。実は、乳幼児から高齢者まで幅広く感染するRSウイルスも、こうした症状を引き起こします。今年は例年より流行の始まりが早く、8月に入ってからは各地で患者数が増えており注意が必要です。
RSウイルスの特徴
RSウイルス(Respiratory Syncytial virus)は、呼吸器に感染して炎症を起こすウイルスです。
- 乳幼児では細気管支炎や肺炎を起こしやすい
- 健康な大人は「かぜ症状」で済むことも多い
- 高齢者や基礎疾患のある方では重症化し、基礎疾患の悪化や肺炎につながることもある
インフルエンザとの違い
RSウイルスとインフルエンザは症状が似ていますが、いくつかの違いがあります。
- 発熱の程度
RSウイルス:高熱が出ないことも多く、微熱や平熱に近いこともある
インフルエンザ:突然の高熱(38度以上)が典型的 - 症状の中心
RSウイルス:咳・鼻水・ゼーゼー(喘鳴)など呼吸器症状が強い
インフルエンザ:全身のだるさ、頭痛、筋肉痛など全身症状が強い - 流行の時期
RSウイルス:夏から秋にかけて流行(ただし近年は時期がずれることも)
インフルエンザ:冬に流行 - 検査の有無
RSウイルス:小児では迅速検査キットで診断が可能。成人ではウイルス量が少ないため、PCRなど精密検査が必要なことが多い
インフルエンザ:迅速検査キットで診断が可能
治療と予防のポイント
インフルエンザには有効な抗ウイルス薬がありますが、RSウイルスには治療に使える抗ウイルス薬はなく、対症療法(熱さましや咳止めなど)が中心となるため、予防が重要になります。
RSウイルスもインフルエンザも、基本的な予防策は共通しています。
- 手洗い・うがい
- マスクの着用
- 咳エチケット
- 体調不良時は無理をせず休む
RSウイルスにもインフルンエンザと同様の感染予防のためのワクチンがあります。60歳以上の方、基礎疾患をお持ちの50歳以上の方、妊婦の方が接種の対象となりますので、ワクチン接種をご検討ください。
呼吸を守るという視点
RSウイルスは「呼吸の通り道」に炎症を起こすウイルスです。呼吸が苦しくなることは、特に乳幼児や高齢者にとって命に関わることがあります。症状が軽くても油断せず、呼吸に関わる症状が強ければ早めに受診してください。
おわりに
RSウイルスは「かぜの一種」と思われがちですが、インフルエンザやその他の呼吸器感染症と区別が必要です。今年はすでに流行が始まっています。症状が続くときは「RSウイルスかもしれない」と意識して、医療機関に相談することが大切です。
2025年09月16日



