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市民のための医療コラム

なぜ「呼吸」が大切なのか──感染症をきっかけに見直す呼吸のはたらき

なぜ「呼吸」が大切なのか──感染症をきっかけに見直す呼吸のはたらき

はじめに

風邪やインフルエンザなど、私たちの身近にある呼吸器感染症。これらの病気にかかると、「咳が止まらない」「息がしづらい」などの症状に悩まされることがあります。健康なときには当たり前のように行っている「呼吸」が、体調を崩したとたんに困難になる。この経験を通じて、初めてその大切さに気づく方も多いのではないでしょうか。
このコラムでは、「呼吸」が私たちの生活や健康にどれほど深く関わっているのかを、感染症という切り口から改めて見つめ直してみたいと思います。

呼吸と体調の関係

呼吸の役割は、体に酸素を取り入れ、不要となった二酸化炭素を排出することです。この働きがうまくいかなくなると、頭がぼーっとしたり、体がだるくなったり、集中力が低下したりと、全身にさまざまな影響が出ます。
呼吸器感染症では、気道の炎症や粘液の分泌物によって空気の通りが悪くなり、また、咳や痰といった症状も重なって、呼吸がしづらくなります。特に高齢の方や基礎疾患を持つ方では、呼吸の負担が大きくなり、重症化することもあります。

感染症を防ぐために呼吸を意識する

呼吸器感染症はウイルスや細菌が呼吸とともに体に入り込むことで起こります。手洗いやマスクの着用が感染予防の基本ですが、「口呼吸」よりも「鼻呼吸」を意識することも、実は感染リスクを下げる助けになります。
鼻は、空気中のほこりやウイルスをキャッチするフィルターのような役割を持っています。乾燥した空気を加湿する機能もあり、病原体が体に入りにくい環境を作ってくれるのです。感染症が流行する季節には、呼吸の仕方にも少し意識を向けてみるとよいでしょう。

息を整えるという視点

感染症の治療や予防だけでなく、「呼吸を整えること」は、体調全体の安定にもつながります。浅く早い呼吸が続くと交感神経が優位になり、体が緊張状態になりやすくなります。
反対に、ゆっくりと深い呼吸を意識することで、副交感神経が働き、リラックスした状態に導いてくれます。感染症の罹患中や回復期、あるいはその予防のためにも、「呼吸を整える」ことはとても有効なセルフケアの一つです。

おわりに

感染症という身近な出来事を通して、「呼吸」の重要性を見直す機会は意外と多くあります。病気になったときだけでなく、日々の生活の中で呼吸を意識することが、健康維持の第一歩になります。今後のコラムでは、具体的な感染症をテーマに詳しく解説していきますが、その背景には常に「呼吸」のはたらきがあることを、ぜひ心に留めておいてください。

2025年07月22日

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