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国際学会参加報告

American Thoracic Society Conference 2019 - International Resident Boot Camp参加報告

会場:Kay Bailey Hutchison Convention Center、アメリカ テキサス州ダラス
日程:2019年5月17日~2019年5月18日

ATS(American Thoracic Society)からInternational Boot Campへの招待を受け、日本呼吸器学会から2名の先生が参加されました。城下彰宏先生と武井玲生仁先生の感想をご紹介します。

Resident Boot Camp ホームページ

城下 彰宏(亀田総合病院 呼吸器内科)

亀田総合病院呼吸器内科後期研修3年目(医師5年目)の城下彰宏と申します。2019年5月18日~19日に開催されたATS resident boot campに参加させていただいたので、内容のご紹介をさせていただきます。
全体で参加者は180人(そのうち、Internationalは10人)と大人数で、米国のresidentとfellowがほとんどを占めるイベントです。概要はcritical careが70%近くを占めており、残りがpulmonologyという感じでした。皆さんもご存知の通り、米国ではpulmonary & critical careといって呼吸器内科は集中治療も行います。私は医師5年目に参加したので、後期研修医になって自分の働いている病院では携わる機会の少なくなった集中治療領域の復習と落穂ひろい、さらに米国の医師とdiscussionして米国と日本の医療現場の差異を知ることができました。学会から500$の援助と、2泊分の宿泊代、2日間の食事の提供が付いており、さらにboot campの参加費も無料という大変手厚い企画です。周りは米国人ばかりで、教員も受講生も容赦なく早口で話してきますので、ある程度の英語力は必要だと思います。いろいろな人とdiscussionする良い機会ですので、英語力に自信のある方は大変有意義に過ごせると思います。どのlectureもそうですが、講師陣のプレゼンテーション能力が素晴らしく、演題名が面白くなさそうな講義でも実際は非常に面白いです。基本的にlectureというよりもdiscussionとhands-onで構成されています。
5月18日は朝8時から夜9時までと大変タイトなスケジュールでした。
Top pulmonary consultation:症例のdiscussion。それは自分の施設だと違ったpracticeを行うだろうという場面もあり、大変勉強になりました。
How to run a code:症例のdiscussion。救急対応についてのおさらい。自分達が常識的に行っていることの背景のEvidenceを知ることができました。
PFT Interpretation:ATSのガイドラインのおさらいと症例discussion。
PA catheter:右心カテーテルは自分で挿入したこともなく、解釈の仕方も教科書を読んだ程度でしたので、勉強になりました。
Airway 101:ほとんど日本でも受けることのできるairway managementのhands-on。Deviceは少し構造が違っていました。
Bronchoscopy:こちらも日本の日常臨床で行っていることと同じ。ただ、後期研修医が始まる前や始まった直後にこのようなhands-on trainingがあれば良かったなとうらやましく思いました。
Mechanical ventilation:人工呼吸器の理論の基礎。復習になりました。
Non-invasive positive pressure ventilation:日本にはないタイプのNIPPVがあり、実際に装着してみて面白かったです。
5月19日は朝7時から夕方4時まででした。
Top ICU emergencies:救急対応についての症例discussion。予想外の対応を必要とした症例が多く、一番勉強になりました。
How to read a chest CT:1時間でひたすらCTを見て、discussionを行いました。初心者~中級者向け。
Pulmonary physiology:忘れつつあった呼吸生理についての復習。Westに載っている内容。
Equipment, gadget and gear:吸入deviceは日本と微妙に違うところがあり、面白かったです。すべてのdeviceを網羅できており、日本でもこのような企画があれば良いなと思いました。
Difficult airway management:日本にないdeviceを使ってhands-onを行いました。
Bronchoscopy for hotshots:EBUS-TBNAとCryobiopsy, ACPのhands-on。
Lung ultrasound, cardiac ultrasound:私自身は何回も勉強したことがある部分だったので、復習になりました。初学者には良いと思います。

全体的に講義1つ1つにここは知らなかったというlearning pointがあり、さらに自分が疑問に思ったことはすぐに聞ける環境なので勉強になります。たまに、日本と違った表現方法をしていることがあり、そのような言い方をするのだと面白く思いました。後期研修医1、2年目で受講するのが一番良いのではないかと思います。このような教育に熱い環境というのはうらやましく思いますし、日本でも再現できたら良いなと思いました。
最後に、resident boot campを企画していただいたATSと日本呼吸器学会に大変感謝いたします。

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武井 玲生仁(公立陶生病院 呼吸器・アレルギー疾患内科)

この度、日本呼吸器学会より推薦をいただいてATSより助成を賜り、ATS2019 International Resident Boot Campに参加させていただきました。
ATSの前々日に開催され、初日は8時から21時、2日目は7時から16時までの2日間にわたり、プログラムはハンズオン、グループディスカッション、講義などで構成されていました。
ハンズオンは、4名前後の小グループに分かれて参加し、気管挿管や心エコー、気管支鏡などの救急外来や集中治療室などで有用な手技を、用意されたシチュエーションごとに学ぶ形式でした。グループディスカッションは、プレゼンテーションに合わせて10名ほどのグループに分かれてディスカッションし、また講義は、8名前後のグループで円卓に座し、呼吸生理などのレクチャーを受ける形式でした。
内容は呼吸器領域、集中治療領域の基礎的な項目を中心とした構成となっており、事前テスト・事後テストが用意されていました。また、Boot Campの内容はFacebookでLive中継されており、他のSNSでも情報は頻繁に発信されていました。
参加者は(少なくとも私の交流した方々は)Residentが多く、今年Clinical fellowになる世代の方々でした。私は、Resident Boot Campに参加後、ATSで2演題を発表し帰国しましたが、米国の医療に触れ、同世代の参加者と交流ができ、大変刺激になりました。今回のResident Boot Campで学んだことをこれからの臨床に活かし、日々の臨床、研究に励んでいきたいと思います。
また、今後も若い世代の方々が、このような機会を通じて世界と交流し、有益な情報を発信できるよう、ぜひ来年度以降も続けていただきたく思います。
最後に、この度は日本呼吸器学会からこのような機会をいただき、心より御礼申し上げます。
また、今回のResident Boot Camp参加にあたって指導してくださった近藤先生をはじめ、参加の手続きをしてくださった袴田様、日本呼吸器学会事務局の方々、出張中に院内の業務をサポートいただいたスタッフの方々に感謝申し上げます。

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