活動・取り組み
国際学会参加報告
MECOR Southeast Asia 2025 参加報告
倉橋 清泰(湘南鎌倉総合病院 麻酔科)
ATS (American Thoracic Society) が提供しているMECOR (Methods in Epidemiologic, Clinical, and Operations Research Program) が、アフリカ、中国、インド、東南アジア、ラテンアメリカ、トルコで地域ごとに開催されています。この活動は、発展途上国の医療従事者に研究の基礎を教えてこの地域での研究を活性化させることにより、全世界的な呼吸器疾患への対策・治療を進めていくという目的で30年以上に渡って行われてきています。そのうちの東南アジア開催が今年はベトナムのホーチミン市で9月15日から19日まで開催され、そこにfaculty memberとして参加してきました。
生徒はほとんどがMDで時に薬学士なども入っています。3つのレベルに分けられていますが、Level 2とLevel 3はそれぞれ前年までに前のレベルを修了した者から選ばれます。半年近く前にATSに提出された研究プロトコルを我々が複数の目で査読しますが今回のSoutheast AsiaのLevel 1は100人近い応募者の中から28人が選ばれました。
カリキュラムは様々な教育手法を用いています。まずはFlipped Classroom Modelとして、コース前に書物やビデオを見ることが義務付けられています。我々tutorは一人3-4人の生徒を受け持ち、会期が始まるとそれぞれの生徒の課題を確認し助言を与え、生徒はまた夜にそれを直して翌日持ってくるというone-on-oneのセッションが毎日あります。その合間にはPlenary Sessionとして我々が交代で研究や発表のエッセンスを講義したり、自分の今までのキャリアの中で研究との関わりのきっかけや研究に対する思いを話したりするセッションもありました。最終日には生徒たちがそれぞれ企画した研究(ほとんどが臨床研究)のプロトコルを例えば症例数の根拠や実施可能性などにも言及しながら皆の前で発表し、Q&Aに答えます。
今回初めてこのプログラムに参加しましたが(JRSからも初参加と聞きました)、アジア各国の若い医者たちの情熱や可能性に改めて驚かされました。日本でも臨床が忙しくて研究ができないといったような声を聞きますが、彼らも同様で、病院業務が終わった後に課題をやったり調査に取り組んだりしていたとのことでした。それでも、皆5日間で目覚ましい進歩を遂げ、ほとんどの生徒がIRBの承認さえ取れれば明日からでも研究が始められるのではないかという位までの完成度に仕上げてきていました。
アジアの1国である日本からこのようなプログラムに参加することの意義は強く感じましたが、それ以上にこのような隣国の若き医師たちが素晴らしいポテンシャルを持っており、その国では例えば教えてくれるメンターがいないだけのことであって、少しのサポートをしてあげるだけでとてつもなく高いレベルの能力を発揮するということを知ったことは、私自身とても勉強になりました。
業務の調整さえつけば来年以降もこのプログラムに参加していきたいと思っていますが、このような取り組みに賛同される方がいらっしゃったら是非一緒に参加していただきたいと思う次第です。






