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日本人のスパイログラム基準値に関するステートメント

2016年7月
日本呼吸器学会肺生理専門委員会

 2001年に、日本呼吸器学会の肺生理専門委員会から日本人のスパイログラムの基準値が公表されて1)15年が経ちました。その後、2014年に日本呼吸器学会肺生理専門委員会が中心となり、日本人の新しい肺活量および努力肺活量、1秒量、1秒率の基準値を報告しました2)
 新しい基準値は、直近の日本人の体格の変化に適応することと、コンピュータの計算能力の向上によるLMS法による基準値計算が生物における基準値として使われることが一般化したために、LMS法による基準値の提示を目的としたものであります(付録1、2)
 LMS法は、人間の各種臓器の大きさのように平均値を中心とした正規分布を取らない計測値を集計して、正常値を非線形曲線で得る方法です。このため、得られる理論正常値はより実態に沿うことになりますが、一方で非線形曲線を記述するために数値表を参照する必要があります。ホームページ上のExcelファイルもそのようになっています。
 加えて平成22年じん肺法改定に伴う肺機能障害認定基準に、呼吸器機能基準値として2001年の基準値予測式の使用が提示され、本年平成28年改訂の身体障害者手帳における呼吸器機能障害の認定でも2001年の予測式の使用が提示されました。
 以上の事柄を勘案し、日本呼吸器学会肺生理専門委員会は、日本人のスパイログラムの基準値に関し、以下の見解を示します。
1)障害認定等の混乱を防ぐため、当面2001年の予測式1)の使用を推奨します。
2)2014年のLMS法による基準値に関しては、今後普及を図るとともに医療機器の対応へ向けて取り組んでいきます。
3)学術雑誌に論文を投稿する際には、じん肺の肺機能障害や呼吸機能障害の障害認定に関する論文を除き、2014年のLMS法による基準値を使用する事を推奨します。

文献

  1. 日本人のスパイログラムと動脈血液ガス分圧基準値、日本呼吸器学会肺生理専門委員会、日本呼吸器学会雑誌 VOL.39 No.5 MAY/2001 巻末14ページ
  2. Kubota M et al. Reference values for spirometry, including vital capacity, in Japanese adults calculated with the LMS method and compared with previous values. Respir Investig 52: 242-250, 2014

付録1

LMS法の概略

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付録2

各平均身長における2001年正常予測式による正常値と2013LMS法の違い

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参考ページ

LMS法による日本人のスパイロメトリー新基準値