Last Update:2017年2月3日

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呼吸器の病気

H-01呼吸不全
きゅうせいこきゅうふぜん

急性呼吸不全・ARDS

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【急性呼吸不全とは】

 呼吸では、空気中の酸素を血液に取り込み、体内で産生された二酸化炭素を血液から呼気に排出します。通常、動脈という体の各臓器に酸素と栄養を運ぶ血管の中にある血液には酸素分圧として100mmHg程度の酸素が存在します。酸素のほとんどは赤血球という細胞の中にあるヘモグロビンに結合しています。酸素分圧が60mmHg未満になると様々な組織や臓器に悪影響が生じるので、何らかの原因によって動脈血中の酸素分圧が60mmHg未満になる病態を呼吸不全と定義しています。呼吸不全のうち、比較的短い期間で急速に起こってきた場合を急性呼吸不全と呼びます。また、呼吸不全は、血液中の二酸化炭素分圧が正常か低下しているⅠ型呼吸不全と、増加しているⅡ型呼吸不全とに分けて考えます。二酸化炭素の排出は肺胞に出入りする空気の量(換気量)により決まるので、二酸化炭素分圧が体内に貯まっているⅡ型呼吸不全とは、様々な要因で換気量が十分でなくなっている状態と考えられます。

【急性呼吸不全の原因疾患】

 急性呼吸不全の原因疾患には様々なものがありますが、肺炎や後述するARDS、急性肺血栓塞栓症、自然気胸などが代表的です。また慢性閉塞性肺疾患(COPD)や間質性肺炎が感染や心不全などの合併を契機に急性増悪することもあります。

【急性呼吸不全の治療】

 急性呼吸不全の治療は大きく分けると、酸素吸入や人工呼吸など呼吸を補助する治療と、呼吸不全を起こした元の病気に対する治療とに分けられます。酸素は生命の維持に不可欠なので酸素投与は必須となります。ただし、Ⅱ型呼吸不全の患者に大量の酸素投与を行うと呼吸が止まってしまうことがあるので、注意が必要です。

【ARDSとはどんな病気ですか?】

 ARDSは急性呼吸促迫症候群(きゅうせいこきゅうそくはくしょうこうぐん、Acute Respira-tory Distress Syndrome)の略語で、単一の病気ではなく、様々な原因によって生じる症候群です。2012年に発表された現在の定義では、(1)1週間以内の経過で急に発症している、(2)低酸素血症が明らかである、(3)胸部エックス線やCTスキャンで両肺に異常な影がある(図)、(4)心不全が原因ではない、とされています。誘因となる“基礎疾患”は、肺に直接ダメージを与えるものと、そうでないものとに分けられます。前者で頻度の高いものには、肺炎や胃内容物の誤嚥があり、後者の代表的なものは敗血症です。敗血症は、血液中に細菌そのものや細菌に由来する毒素などが入り、様々な臓器がダメージを受ける状態を指します。ARDSを起こした肺では、基礎疾患に伴って活性化した好中球(白血球の一種)から細胞や組織を傷つける活性酸素や蛋白分解酵素が放出されると考えられています。肺胞や毛細血管の細胞がダメージを受けた結果、血液中の水分や蛋白がにじみ出て、肺胞にひどい浮腫を起こします。

図1

【ARDSの治療法はありますか?】

 ARDSの治療に関しては、呼吸管理を中心とする全身管理と薬物療法の2つに分けられます。低酸素血症を改善させるためには気管に入る空気に圧力をかける必要があるため、気管チューブやマスクを使った人工呼吸管理を行います。また敗血症や肺炎など原因となっている細菌感染症に対する抗菌薬療法や全身管理を行う目的での水分や栄養の管理を行います。薬物療法ですが、残念ながらARDS患者の生存率改善につながるような薬剤は現在まで知られていません。

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