日本呼吸器学会・日本心不全学会 合同ステートメント
COPDと心血管疾患における診療実践ガイド 「Cardiopulmonary risk(心肺リスク)を考慮したCOPD管理の実践」の公表について
2025年8月28日
COPD(慢性閉塞性肺疾患)と心血管疾患は、高頻度に併存することが知られており、両疾患が併存することで、それぞれの生命予後に悪影響を及ぼす可能性があることが報告されています。近年のレビューでは、COPD患者においてCOPD増悪が次回の増悪リスクを高めるだけでなく、心血管イベント(心肺イベントによる死亡を含む)のリスクも上昇することが示されており、この複合的なリスクは「Cardiopulmonary Risk(心肺リスク)」として注目されています。一方で、COPDの診断率は低く、初期は自覚症状に乏しいことも多いことから、未診断症例が多数潜在し、気づかないうちに呼吸機能低下が進行していく症例がおられることが危惧されます。
今後は、呼吸器専門医のみならず、循環器専門医や循環器疾患を診療するプライマリ・ケア医に対しても、「Cardiopulmonary Risk(心肺リスク)」に対する理解を促進し、このリスクを考慮したCOPD管理の重要性について積極的な啓発活動を展開していくことが、未診断のCOPDの早期診断に繋がり、より適切な診療を届けることができると考えております。
これらの背景のもと、日本呼吸器学会では、COPD患者の死亡原因として、心血管イベントによるものも一定数存在することを踏まえ、「Cardiopulmonary Risk(心肺リスク)を考慮したCOPD管理の実践ガイド」を日本心不全学会の協力のもと策定し、学会ホームページにて公表いたしました。
日本心不全学会は、心不全患者の多くがCOPDと共通の症状である労作時の息切れを呈し、喫煙歴のある心不全患者のおよそ30%に気流閉塞が認められること、そしてCOPDの併存が心不全の死亡リスクを高めることから、心不全診療において重要な併存疾患であるCOPDの診断と治療の実践を推進していくことを目指していきます。
両学会は今後も協働し、実践ガイドの相互リンクの設置をはじめ、「Cardiopulmonary Risk(心肺リスク)」の理解促進を通じて、先生方のCOPDおよび心血管疾患の診療に資する情報を提供してまいります。
一般社団法人日本呼吸器学会
閉塞性肺疾患学術部会 木洩れ陽WG
室 繁郎、井上 純人、大石 景士、佐藤 晋、高橋 浩一郎、谷村 和哉、玉田 勉
中鉢 正太郎、川山 智隆、柴田 陽光、杉浦 久敏、福永 興壱、松永 和人
一般社団法人日本心不全学会
吉村 道博、室原 豊明、桑原 宏一郎、渡辺 昌文
一般社団法人日本呼吸器学会
理事長 高橋 和久
一般社団法人日本心不全学会
理事長 絹川弘一郎